「5つのパンと2匹の魚で5千人のお腹を満たしたキリスト」
聖書:ヨハネ6章1節~15節
牧師:佐藤勝徳
これまで、水を葡萄酒に変え、役人の死にかかっている息子を癒し、38年間病気だった人を癒すというそれらの奇跡を通して、キリストは「創造主が人となられた救い主」だという事を学んできました。今朝は、5つのパンと2匹の魚を次々と増やして5千人の人々のお腹を満たされたキリストの事を学びたいと思います。キリストはガリラヤ湖の南西にある向こう岸と呼ばれているデカポリス地方のある山で、ご自身の全能の力で5つのパンと2匹の魚で5千人の人々のお腹を満たす奇跡をされました。それは、ユダヤ人の祭りである過ぎ越しが間近になっていた穏やかな春の出来事でした。
過ぎ越しの祭りというのは、今から約3500年前に、イスラエルの人々が400年間奴隷として苦しんだ苦しみのエジプトから解放された出来事を記念して行われる祭りです。それは、創造主の神様がエジプトの「ナイル川を血にする」とか「真暗闇で3日間何も見えないようにする」とか「エジプトの長男をすべて打つ」とか、10の奇跡をもって先祖のイスラエルを救ってくださったので、その時に示された創造主の愛と全知全能の力を思い起こし感謝するためでした。又、今も創造主が奇跡をもってイスラエルを助けて下さる事を信じる信仰の確立の為の祭りでした。
イスラエルの人々は「過ぎ越し祭」が間近になれば、エルサレムの都に上る為の準備をしなければなりません。にも関わらずイスラエルの多くの人々は、ガリラヤの向こう岸という遠い場所におられたキリストの下に集まって来たのです。それは、キリストが奇跡をもって多くの病人を癒されていたことを見たからでした。その彼らに、昔、イスラエルの人々を奇跡でもって苦しみのエジプトから解放した愛に満ちた全知全能の創造主がご自身である事を教える為に、5つのパンと2匹の魚でお腹を空かしている5千人のお腹を満たす奇跡をなさろうとされていました。
創造主の神が奇跡をもって物を増やすという出来事は旧約聖書でも何度か教えられています。その1つは、昔、イスラエルとその周辺地域に大干ばつが襲った時、食事の為のわずかな粉と油しかない1人男の子を持つ母親が、シドンのザレパテに住んでいました。その彼女が、預言者エリヤの要望に応じてエリヤの為に小さなパン1つを作りました。すると、その後、その母親のかめの粉は尽きず、つぼの油は絶えなかったのです。その奇跡は、大干ばつが終わるまで続きました。キリストはその奇跡を行ってきた創造主だという事を、「水を葡萄酒に変える奇跡」、「役人の死にかかっている息子を癒す奇跡」、「38年間病気だった人を癒す奇跡」、又、そのほかの多くの病人を癒す奇跡の御業で示されてきました。
弟子達は目の前のキリストを「創造主が人となれた救い主」だと信じていました。キリストはその彼らにその信仰を現実の問題に適用できるかどうかを試す為に、「どこからパンを買って来て、この人々に食べさせようか。」と尋ねられました。弟子のピリポは「めいめいが少しずつ取るにしても、2百デナリのパンでは足りません。」と否定的な返答をしました。2百デナリは約2百万円です。彼は、その言葉の後に、「しかし、主よ。あなたには不可能はありません。どうかあなたの力で群衆のお腹を満たして下さい」と返答すべきだったのです。もう1人の弟子であるアンデレは「ここに少年が大麦のパンを5つと小さい魚を2匹持っています。しかし、こんなに大勢の人々では、それが何になりましょう。」と消極的な返答しました。彼もその言葉の後に「しかし、主よ、あなたは全知全能の創造主の神ですので、5つのパンと2匹の魚を使って、これらの群衆のお腹を満たして下さい」と、言うべきだったのですが、その言葉が出てきませんでした。そのような彼らの為に、キリストは5つのパンと2匹の魚で5千人のお腹を満たされたのです。キリストはその奇跡を通して、弟子たちが現実の問題に対しても、ご自身の可能性を信じ切る信仰を持つように訓練されたのです。私たちは、キリストが全知全能の創造主の神様で、全てが可能だと信じていても、現実の様々な困難な問題に遭遇した時に、そのお方の可能性に目を向けないで、失望したり絶望したりして「もうだめだ」と、否定的な言葉を発してしまうのではないでしょうか。しかし、私たちが遭遇する様々な問題は、否定的な思いを退けて、キリストの愛とお力に信頼して「前向きに」力強く生きて行く人となるための「訓練」として与えられているのです。
私には、5人の子どもがいますが、彼らがまだ小学生、中学生、高校生の食べ盛りの時に、ある事で私は貧しさの中におかれました。妻が「明日食べる米がない」というので、2人で神様に助けを祈りました。しばらく祈ってから妻が「お父さん、もう祈らないでいいよ」というのです。私は不思議に思って「なぜだ」と尋ねると「かめの粉は尽きず、つぼの油は絶えない」という旧約聖書のみ言葉が示されたというのです。私は、不思議に思いながらも祈りを止めました。翌日、ある人から電話がかかってきたのです。「米1袋(30キロ入り)をもらったので差し上げます。取りに来てください」というのです。創造主の神様の愛の奇跡の御業でした。
5つのパンと2匹の魚で5千人以上の成人男性のお腹を満たされたキリストは「愛に満ちた全知全能の創造主の神が人となれら救い主」だという事をあなたに知らせる為の奇跡(しるし)なのです。あなたが、全知全能の全てが可能な創造主のキリストを信じて、様々な試練の中にあっても、希望を失わないで力強く歩まれる人生を得とくされますようにお祈りします。
「しかし、神にはどんなことでもできます。」(マタイ19章26節)