シリーズ神学ミニレポート
2023年4月11日
米子/鳥取復活教会牧師:佐藤勝徳
創世記の終末論Ⅳ
                                                           創世記12章~16章                        

【はじめに】

 創世記12章~50章に記録されているアブラハム、イサク、 ヤコブ達の族長物語が歴史的事実だと、ファイファーは彼の著書「旧約の歴史」(聖文舎1985年発行)の1章で論じ、結論として以下のように述べています。

「19世紀最大の旧約学者・・・ウェルハウゼンは多くの考古学的発見がなされる前のことであったから、良心の痛みを感じる事無く、次のように言う事が出来た。『ここに族長たちの歴史性を示す資料は何もない。それはイスラエルの民の間に生じた物語であって、それらがつくられたのはずっと後期である。それが内的にも外面的からも古めかしい時代のものに修飾せられ、栄光に輝く英雄として考えられるようになった』と。しかし現在彼の学派に属する人々は彼の結論の多くを修正している。今日までの50年間における考古学的発見は、族長たちの物語が、聖書の示している時代にのみ適合している事を示している。マリで発見された粘土板は、族長たちが生きていた政治的、社会的状況を描いて見せてくれている。ウェルハウゼンの説は、族長時代の莫大な考古学的資料が発見される前においてのみ、はばをきかすことができたのである。」(P20~21)  「彼ら(聖書に書かれた族長たち)は今日の考古学的発見によって知られている現実の世界に生きた、実存の人物として描かれている」(P24)

聖書が人類の歴史の全てをご存知の創造主の神の霊感よって書かれたという事を、ファイファーが主張するように、現代においては考古学的発見や聖書と一致する科学的事実によっても明らかにされています。ファイファーが考古学的発見による莫大な資料が、アブラハム、イサク、ヤコブ達の族長物語の歴史性を示している科学的論証であるという発言の意義深さは計り知れません。

以下に、聖書の族長たちが文字通りに歴史的に存在した実在の人物であるという事実に基づいて「創世記の終末論」をレポートしていきたいと思います。

Ⅰ 創世記12章の終末論

1、最初のアブラハム契約(12:1~3) 

                                                                                                カルデヤのウルからハランへハランからカナンの地へ主に従って大移動をしたアブラハムと、神は以下の通りにと契約を結ばれました。(※アブラハムは元々アブラムと言う名前でしたが、後に神はアブラハムと改名されましたので、このレポートでは一貫してアブラハムを使用します。)

◆「創12:1【主】はアブラムに言われた。「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい。12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。12:3 わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」

 上記の創世記12:1~3は、神がアブラハムと最初に結ばれた「アブラハム契約」です。以下の5つの重要な契約条項が結ばれています

① あなたを大いなる国民とする

この契約条項は、アブラハムから多くのイスラエルの民が誕生して成就しましたが、やがて終末に実現するメシヤ的年王国におけるイスラエルの民は1人も死なないので、その人口は爆発的に増加し、アブラハム契約の真実性がメシ更に明確に証明されます。

◆「申 10:22 あなたの父祖たちは七十人でエジプトへ下ったが、今や、あなたの神、【主】はあなたを空の星のように多くされた。」

◆「ホセ 1:10 イスラエルの子らの数は、量ることも数えることもできない海の砂のようになる。「あなたがたはわたしの民ではない」と言われたその場所で、彼らは「生ける神の子ら」と言われる。」

ホセアは、メシヤ的王国におけるイスラエルの人口が爆破的に増加することを預言しています。

② あなたを祝福し大いなるものとする

2番目の契約条項は、アブラハムを彼の子孫であるイスラエルの国民と、サラの侍女ハガルがアブラハムによって生んだイシュマエルの末裔であるアラブの人たち(イスラム教徒たち)と、キリスト教徒たちからアブラハムが「偉大な信仰の父」として尊敬されてきました。それによって、彼が「大いなるものとする」という条項が成就しています。。

③ あなたは祝福となりなさい

3番目の契約条項はアブラハムがあらゆる面で祝福に満ち生涯を終えた事で成就しました。

◆「創 24:1 アブラハムは年を重ねて、老人になっていた。【主】は、あらゆる面でアブラハムを祝福しておられた。」

④ あなたを祝福するものは祝福され、呪うものは呪われる

4番目の契約条項は、アブラハムの子孫であるイスラエルに受けつがれ、イスラエルに対して、今日まで世界の中にはイスラエルを祝福する者たちと、反ユダヤ主義や反イスラエル国家やキリスト教界では置換神学等によってイスラエルを呪うものが存在し、その契約が実行され成就されています。キリストは7年の大艱難時代の後半3年半の反ユダヤ主義者たちが「メシヤ的王国」の住民になれない事と永遠の刑罰を受ける事を明確にされました。(参照:マタ24章32節~46節)

⑤ 地の全ての部族はあなたによって祝福される

5番目の契約条項は一部成就しています。それは聖書66巻が全てユダヤ人によって書かれ、キリストがユダヤ人を通してこの世界に遣わされ、世界は大いなる祝福に預かってきたことです。その他、色々な分野でユダヤ人を通して世界は多くの祝福を受けてきました。それは、これまでのノーベル賞受賞者800人以上のうちその20%以上がユダヤ人であることで証明されています。ウイキペディアで次のように教えられています。ノーベル賞はこれまで800人を超える個人に贈られているが、その少なくとも20%がユダヤ人であり、ユダヤ人は6種類の賞すべてを受け取っている。ユダヤ人は世界の人口の0.2%以下を構成するに過ぎないに関わらずである。(2022年12月13日に掲載)。しかし、「地のすべての部族があなたによって祝福される」という祝福の約束は全面的にはまだ成就していません。それは、キリストの再臨によりイスラエルを中心としたメシヤ的王国がこの世界に実現すると時に成就するのです。アブラハム契約は終末のメシヤ的王国を見据えて結ばれている事を創世記は教えています。メシヤ的王国においてイスラエルが全世界の人々をあらゆる面で祝福する事が聖書で預言されています。

◆「申 15:6 あなたの神、【主】はあなたに約束したようにあなたを祝福されるから、あなたは多くの国々に貸すが、あなたが借りることはない。また、あなたは多くの国々を支配するが、彼らがあなたを支配することはない。」

◆「ゼカ8:23 万軍の【主】はこう仰せられる。「その日には、外国語を話すあらゆる民のうちの十人が、ひとりのユダヤ人のすそを堅くつかみ、『私たちもあなたがたといっしょに行きたい。神があなたがたとともにおられる、と聞いたからだ』と言う。」

◆「ダニ 7:27 国と、主権と、天下の国々の権威とは、いと高き方の聖徒である民に与えられる。その御国は永遠の国。すべての主権は彼らに仕え、服従する。』

 

2、2回目のアブラハム契約(創12:6~7)

◆「創12:6 アブラムはその地を通って、シェケムの場所、モレの樫の木のところまで行った。当時、その地にはカナン人がいた。創12:7 【主】はアブラムに現れて言われた。『「わたしは、あなたの子孫にこの地を与える。」』アブラムは、自分に現れてくださった【主】のために、そこに祭壇を築いた。」

  以上の聖句は、アブラハムが神に導かれてやってきた「カナンの地」を神がアブラハムの子孫に与えるという契約が結ばれていますので、それは2回目のアブラハム契約となっています。。 二回目のアブラハム契約において約束されている「土地の約束」の範囲は、創世記15章で詳細に啓示されています。その約束はメシヤ的王国において実現す

る事がエゼキエル書でより詳細に預言されています。(参照:エゼキエル書48章)

◆「エゼ48:29 以上が、あなたがたがイスラエルの部族ごとに、くじで相続地として分ける土地であり、以上が彼らの割り当て地である。──神である主の御告げ──」

 

3、エジプトでの危機(12:10~20)

◆「創12:10 その地に飢饉が起こったので、アブラムは、エジプトにしばらく滞在するために下って行った。その地の飢饉が激しかったからである。」

飢饉の為に、アブラハムがエジプトに下った時に、エジプトの王に美しい彼の妻サライの為に、自分の命が奪われる事を恐れて、サライを妹だと偽って、エジプトの王に喜んで召し抱えさせました。それ故に、エジプトの王は多くの贈り物をアブラハムに与えました。しかし、エジプトに酷い災いが下り、その原因を王がアブラハムにだまされて、サライをアブラハムの妻と知らず召し抱えた事にあったと知り、すぐにサライをアブラハムに戻しました。しかし、アブラハムは王から怒りを受ける事無く、多くの財産を得てエジプトを去ることが出来ました。それは大変不思議な事です。もし、アブラハム契約が結ばれていなければ、彼とその一族は、王に嘘をついたことで王の激しい怒りをかい絶滅していた可能性があります。神様はその危機から彼を守る為に「アブラハム契約」を結ばれていたのです。もし、アブラハム契約を結んでいなければ、悪魔がエジプトの王を使って、アブラハム一族を絶滅させていたでしょう。神は、エジプトに酷い災いを下すことによって悪魔によってアブラハムたちが滅ぼされる事から守られました。

Ⅱ 創世記13章、3回目のアブラハム契約

◆「創13:14 ロトがアブラムから別れて行った後、【主】はアブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいるその場所から北、南、東、西を見渡しなさい。13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地をすべて、あなたに、そしてあなたの子孫に永久に与えるからだ。13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのように増やす。もし人が、地のちりを数えることができるなら、あなたの子孫も数えることができる。13:17 立って、この地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに与えるのだから」。

創世記13:14~17は第3回目のアブラハム契約であり、その内容はやはり土地の相続に関するものです。アブラハムは甥のロトと分かれたべテルとアイの間の場所から、東西南北を見渡し、その見渡す土地、又、アブラハムが歩み踏んだ土地をアブラハムと彼の子孫に永久に与えると、神は約束されました。

 アブラハムと彼の子孫に対する契約でしたが、それは彼の生きている間においても、今日においてもまだ成就していません。アブラハムがカナンの地で得た土地は、妻サラを葬るための小さなマクペラの畑地でした(創世記28:20)。しかし、神はご自身が約束された契約は必ず守られる真実なお方ですので、アブラハムを甦らせ、必ず実現をされる事は間違いありません。

聖書の終末論の学びは、神がアブラハムと結ばれたアブラハム契約をどのようして実現されて行かれるのかを学ぶ事でもあります。

 

≪創世記13章15節は終末に登場するメシヤ預言である≫

創世記13章15節の「わたしは、あなたが見渡しているこの地をすべて、あなたに、そしてあなたの子孫に永久に与えるからだ」という約束をパウロはメシヤ預言だと解釈しています。

◆「ガラ3:16 ところで、約束は、アブラハムとそのひとりの子孫に告げられました。神は「子孫たちに」と言って、多数をさすことはせず、ひとりをさして、「あなたの子孫に」と言っておられます。その方はキリストです。」

アブラハム契約の実現は、やがて終末に来臨されるキリストの十字架の死と復活の御業が、保証となって実現することをパウロはローマ書15章で教えています。

◆「ロマ15:8私は言います。キリストは、神の真理を現すために、割礼のある者のしもべとなられました。それは父祖たちに与えられた約束を保証するためであり、・・」

Ⅲ創世記14章、アブラハムが戦利品の十分の一を大祭司メルキゼデクに献げる

創世記14章は、ロトが住んでソドムとゴモラの町の王たちは、これまで12年間エラムの王デアケダラオメルに貢物をもって仕えていたが、13年目に背いたために、14年目にメソポタニアの4人の王の連合軍による侵略を受け、全てが奪われてしまいました。その時、アブラハムの甥であるロトとその家族と財産を全て奪われました。しかし、アブラハムは、僕318人を招集して、メソポタミヤ連合軍をダンまで追跡をして夜襲をかけて、メソポタミヤ連合軍に勝利をして、奪われたすべて取り戻したのです。凱旋したアブラハムに、天と地を造られたいと高き神に仕えるシャレムの王であり祭司である「メルキゼデク」が彼を祝福しました。その祝福に感謝してアブラハムは、取り戻した全て10分の1を「メルキゼデク」に献げたのです。「メルキゼデク」はモーセ律法によって設けられた祭司制度の中でレビ族出身のアロンが大祭司に就任する前に、既に神によって立てられていた不思議な大祭司でした。彼の事をへブル書は次のように教えています。「7:1 このメルキゼデクは、サレムの王で、すぐれて高い神の祭司でしたが、アブラハムが王たちを打ち破って帰るのを出迎えて祝福しました。7:2 またアブラハムは彼に、すべての戦利品の十分の一を分けました。まず彼は、その名を訳すと義の王であり、次に、サレムの王、すなわち平和の王です。7:3 父もなく、母もなく、系図もなく、その生涯の初めもなく、いのちの終わりもなく、神の子に似た者とされ、いつまでも祭司としてとどまっているのです。 7:4 その人がどんなに偉大であるかを、よく考えてごらんなさい。族長であるアブラハムでさえ、彼に一番良い戦利品の十分の一を与えたのです」。

以上の偉大な神の子のような存在となっていたサレムの王であり大祭司であるメルキゼデクの位に等しい、偉大な大祭司となられたのが、十字架にかかり三日目にご復活をされたイエス・キリストなのです。アブラハムを祝福したメルキゼデクは、やがてキリストが偉大なる大祭司となられる型として創世記に登場しているのです。聖書は、やがて終末の時代に悪魔を滅ぼす為に登場する「女の子孫であるメシヤ」が「メルキゼデクの位に等しい大祭司」となる事を預言しています。

「詩 110:4 【主】は誓われた。思い直されることはない。「あなたはメルキゼデクの例に倣いとこしえに祭司である。」

へブル書も次のように教えています。「5:5 同様に、キリストも大祭司となる栄誉を自分で得られたのではなく、彼に、「あなたは、わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。」と言われた方が、それをお与えになったのです。 5:6 別の個所で、こうも言われます。「あなたは、とこしえに、メルキゼデクの位に等しい祭司である。」

人間にとって最大の栄誉は、大祭司となって、罪びとと聖なる神さまの間に立って、罪びとの為にとりなしをし、赦された罪びとに神さまの祝福が注がれるように祈り、その為の務めを果たすことです。人となられ、人類の全ての罪を十字架で取り除かれた、イエス・キリストが永遠の大祭司であるメルキゼデクの位に等しい大祭司となるという、最大の栄誉を得られたのです。それはモーセ律法が設けた祭司制度とは異なる方法での大祭司就任でした。モーセ律法では、レビ族のアロンの家系から祭司と大祭司がたてられることが規定されています。もし、そのモーセ律法がキリストの十字架の死で終わっていなければ、キリストは律法違反者となって、十字架の死と復活の救いの御業は意味のないものとなってしまいます。なぜなら、モーセ律法では祭司と大祭司となるのはレビ族のアロンの家系に限られており(出エジプト28:40‐43,29:9,民数3:10)、キリストはユダ族出身だからです。キリストが、ご自身が栄誉ある「メルキゼデクの位に等しい永遠の大祭司」に就任する為に、モーセ律法613を十字架で終わらせたのです。「ロマ10:4 キリストが律法を終わらせられた」

悪魔は自分の「野望」達成の為に、神を信じた聖徒を天の父なる神に向かって「告訴」することが許されました。(ルカ22:31)。悪魔が聖徒を告訴して、神の正義によって聖徒が裁かれて行けば、それは、キリストの空中再臨と地上再臨を阻止し、悪魔の勝利となってしまいます。悪魔のキリストを信じる聖徒に対する神への告訴が退けられるために、メルキゼデクの位に等しい大祭司とならえれたキリストが、天に携えあげられた十字架で流された贖罪の血をもって、悪魔が告訴する聖徒の罪の赦しの為にとりなしを日々されているのです。そのとりなしの故に、聖徒が罪を告白すればすぐに赦され、神との交わりの回復が与えられているのです。罪赦された聖徒は、喜んで空中に再臨されるキリスを迎える事が出来るのです。私たちがキリストの十字架の血だけで赦されるのは、キリストが天においてその十字架の血によって父なる神にとりなしをされているからなのです。「ヘブル 7:25 したがってイエスは、いつも生きていて、彼らのためにとりなしをしておられるので、ご自分によって神に近づく人々を完全に救うことがおできになります。」

アブラハムが十分の一を献げ物を献げた大祭司メルキゼデクは、やがて終末に登場する大祭司キリストの予型として創世記に神は登場させておられるのです。大祭司キリストは、やがて悪魔の野望を完全に打ち砕くのです。

Ⅳ 創世記15章、4回目のアブラハム契約

1、アブラハムに星の数ほどの子孫が与えられる約束

◆「創15:5 そして主は、彼を外に連れ出して言われた。『さあ、天を見上げなさい。星を数えられるなら数えなさい。』さらに言われた。「あなたの子孫は、このようになる。』15:6 アブラムは【主】を信じた。それで、それが彼の義と認められた。15:7 主は彼に言われた。「わたしは、この地をあなたの所有としてあなたに与えるために、カルデア人のウルからあなたを導き出した【主】である。」

創世記15:5~7には、第4回目のアブラハム契約が啓示されています。その内容は、アブラハムの子孫が「星の数ほど多く生まれる」という約束でした。アブラハムはその約束を信じたので、神によって「義」と認められました。アブラハムの妻サライは子どもを産めない体でしたが、それでもアブラハムは自分とサラとの間に必ず子どもが授かる事を100%信じ切って神に喜ばれたのです。この約束について少し既述していますが、今日までにおいて、すでに成就したかのように思えます。アブラハム→イサク→ヤコブの血統の系列によるイスラエルの民族を総トータルで数えれば、驚くほどの数になるでしょう。しかし地上において、彼の子孫が星のように多く存在するという状況はまだ見られません。ユダヤ人は、戦争や迫害などによりどれほど多く虐殺されてきたでしょうか。ヒトラーは当時のユダヤ人3分の1にあたる600万人を虐殺しました。現在全世界のユダヤ人の人口は1400万人程だと言われています。終末の7年の大艱難時代においては反キリストと彼の世界連合軍によりその時代の3分の2のユダヤ人が虐殺されるとゼカリヤ書13章8節で預言されています。既述していますが、イスラエルの人口が地上で星の数ほど存在するのは、やがて再臨のキリストにより、実現するメシヤ的王国を待たねばなりません。イザヤによるとメシヤ的王国におけるイスラエルの民は全て木のように長い寿命を与えられると預言されていますので、驚くほどの多くのイスラエルの民が存在する事が分かります。「イザ65:22わたしの民の寿命は、木の寿命に等しく、・・」。

もう一つの約束は「土地の約束でしたが、その約束の土地範囲がは15章18節~21節で明確になります。

 

2、約束の土地の具体的な範囲

「創15:18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで言われた。「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える。エジプトの川から、あの大河ユーフラテス川まで。15:19 ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、15:20 ヒッタイト人、ペリジ人、レファイム人、15:21 アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の地を。」

神は、創世記13章におい「13:17 立って、この地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに与えるのだから。」と、アブラハムが歩いた範囲の土地を与えると約束されました。その約束に従ってアブラハムが歩いた範囲の地域が、上記の範囲であった故に神は約束の土地の具体的な範囲を明示されました。それは、南の境は「エジプトの川」であり、北の境は「ユーフラテ川」でした。東西の範囲はケニ人、ケナズ人、カデモニ人、ヒッタイト人、ペリジ人、レファイム人、アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人たちが住んでいる地でした。以上が5回目のアブラハム契約です。しかし、現在の私達からして、それが具体的にどのような範囲なのか、詳細に知る事はできないと言われています。しかし、神はご存知ですので、エゼキエル書48章でその範囲が更に具体的に明示されています。約束のカナンの土地を文字通りに受けつぐのは、キリストが再臨された後に実現するメシヤ的年王国であることを聖書は教えています。その時に、アブラハムは必ず甦ります。なぜなら土地の約束は、アブラハム個人とイスラル民族とに対する約束となっていますので、すでに死んだアブラハムがその約束の実現を見るためには必ず甦る必要があるからです。創造主を「死人をよみがえらせる神」だと100%信じ切っていたアブラハムも神が自分を甦らせて「土地の約束」を実現されると信じていたでしょう。

◆「ロマ 4:17 このことは、彼(アブラハム)が信じた神、すなわち死者を生かし、無いものを有るもののようにお呼びになる方」

 3、アブラハム契約は無条件契約

◆「創15:17 日が沈んで暗くなったとき、見よ、煙の立つかまどと、燃えているたいまつが、切り裂かれた物の間を通り過ぎた。15:18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで言われた。」

聖書に啓示されている、契約の方法の一つは古代においては「血の契約」と呼ばれるものです。それは、裂かれた動物の間を、当事者の契約者達が通り、もし契約を破れば、動物のように自分が引き裂かれ血を流し殺されても構わないという命がけの契約です。神がアブラハムと結ばれた約束の土地を与えるという契約は命がけの「血の契約」でした。聖書には、「虹の契約」(創9:23)、「割礼の契約」(創17:10)、「石柱の契約」(創31:45)、「血の契約」(出24:8)、「塩の契約」(レビ21:3)、「シナイ契約」(出31:18)  「モアブ契約(ラウンド契約/パレスチナケ契約)」(申29:1~30:20)、「履物契約」(ルツ4:7~8)など、いくつかの契約と契約方法が教えられていますが、神がアブラハムと結ばれた契約は「血の契約」でした。しかし、その裂かれた動物の間を通り過ぎたのは、煙の立つかまどと燃えるたいまつだけでしたが、それはある物で神の臨在を顕す「シャカイナグロリー」でした。神はシャカイナグローリーの煙の立つかまどと燃えるたいまつと共に裂かれた動物の間をお通りになられたのです。しかし、アブラハムは通りませんでした。それ故に、この契約は「片務契約」とも呼ばれ、契約の責任は片方だけに問われる契約となっています。神だけがその契約の実行の責任を負われたのです。アブラハムにはその責任を何も負わせられないので、「片務契約」は「無条件契約」とも呼ばれています。

聖書には、神の臨在を顕すのに「光」「煙」「雲」などが用いられ、それをユダヤ人は「シャカイナグローリー」と呼んでいます。荒野をイスラエルが40年間放浪した時に彼らを導いたのは、昼は雲の柱、夜は火の柱という「シャカイナグローリー」でした。(出エ40:34~38)。ソロモン神殿の奉献祭で神殿にシャカイナグローリの雲が顕れ祭司たちがひれ伏しました(Ⅰ列王8:10~11)。イエス様が変貌山でご自身が光輝かれたその光も、人間キリストの中に神が臨在されている事を示す「シャカイナグローリー」でした(マタ17:1~5)。また、キリストが雲に迎えられて天にお帰りになり、また、雲に乗って再臨される時の雲も「シャカイナグロリー」を意味し、キリストが神であることを教えています。(使徒1:9、マタ24:30、26:64、黙1:7)

神は「シャカイナグロ-リー」をもって、アブラハムと無条件契約を交わし、その約束を終末のメシヤ的王国において必ず実行をしようと心を燃やされています。

 

Ⅴ 創世記16章の終末論

◆イシュマエルはアラブの先祖

「創16:16 ハガルがアブラムにイシュマエルを産んだとき、アブラムは八十六歳であった。」

サラに仕えたハガルが生んだアラブの先祖イシュマエルはその後、アブラハム家族の家庭内争いの種となり、それが、今日の中東問題であるイスラエルとアラブの間の争いの根源的な原因だと言われています。15歳以上になっていたアラブの先祖イシュマエルは、サラが生んだ約束の子イサクの乳離れのお祝いの席で、イサクを妬み、悪意と殺意をもってからかいなじったのです。

◆「創21:8アブラハムはイサクの乳離れの日に、盛大な宴会を催した。 21:9 そのとき、サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムに産んだ子が、自分の子イサクをからかっているのを見た。」。サラは、イシュマエルがいるとイサクの命が危ない事を察知し、アブラハムにハガルとイシュマエルの追放を願い、アブラハムに申し出て実現しました。人殺しである悪魔は、イシュマエルの悪意と殺意を使って、悪魔の敵である「女の子孫」であるメシヤ誕生の神の語計画を妨害しようとしたのです。しかし、サラの機転でそのチャンスを彼は失ったのです。

イシュマエルはアラブの先祖だとキリスト教徒もユダヤ人もアラブの人たちも共通して主張をしています。神がご計画されている終末の歴史は今日イスラエルを取り巻く反ユダヤ主義の「アラブ」を含ませながら進んでいる事を聖書は教えています。では、イシュマエルがなぜアラブの先祖と言えるのでしょか。その聖書的根拠は、神がイシュマエルを大いなる国民にすると約束され、12人の子どもたちを授けられた事にあります。

◆「創 17:20 イシュマエルについては、あなたの言うことを聞き入れた。必ず、わたしは彼を祝福し、子孫に富ませ、大いに増やす。彼は十二人の族長たちを生む。わたしは彼を大いなる国民とする」。イシュマエルが生んだ12人の子どもたちは次の通りです。①ネバヨテ ②ケダル ③アデベエル ④ミブサム ⑤ミシュ ⑥ドマ ⑦マサ ⑧ハダド⑨テマ ⑩エトル ⑪ナフィシュ ⑫ケデマ (創25:13)

神の約束で大いなる国民となったイシュマエルの子孫であるアラブは、イシュマエルがイサクに対して妬み悪意と殺意を持ったその傾向性の継承者となりました。それ故にアラブは反ユダヤ主義者となり、今もイスラエルの絶滅を願っていると言われています。2019年の2月に静岡で開催された日本ペンテコステ親交会カンファレンスで、イスラム教から解放されクリスチャンになったクエートのアラブ人女性が、「小さい時からユダヤ人を憎む教育を受けてきました」と証をしています。又、メシヤニック・ジュのフルクテンバウム博士も「イシュマエル」に関する教えの中で、イシュマエルの子孫はアンチ・セミティック(反ユダヤ主義者)だと 教えています。又、イスラム教の経典である「コーラン」には、ユダヤ人を滅ぼすことがアッラーのみ心として教えられていると、川端光生牧師は教えています。「パレスチナ自治区の学校の教育方針は、ユダヤ人に対する徹底したした憎悪教育です。『ユダヤ人を殺すことはアッラーの喜ばれる事であり、イスラエルを滅ぼす為のジハード(聖戦)で死ねば、即天国に行き天国で複数の美しい妻が与えられる』と教えられています。それがコーランの教えです」(「実は知らなかったイスラエル2」P125)。更に、BFPの月刊誌オリーブでも、パレスチナの子どもたちが現在も「反ユダヤ主義」の教育を受けていると何度か報告をしています。「2023年1月28日に銃撃テロを起こした13歳の少年、彼の通う学校の教科書内容が明らかになりました。パレスチナ自治政府承認の国語の教科書には『敵ののどを切り裂く』『爆破物のついたベルトを身に着ける』と言った文書に『パレスチナ人に射殺されるイスラエル人兵士』のイラストが添えられていました。パレスチナ(PA)教育省が昨年9月に出版したイスラム教教育書は、殉教は『必須』で、『名誉と栄光をもたらす天国の道を保証する』と教えています。今回の少年のノートに『ユダヤ人を攻撃して死にたいと書いていました」(BFP月刊オリーブ2023年3月号)。聖書にも次のように啓示されています。

◆「詩篇83:4 彼らは言っています。『さあ、彼らの国を消し去って、イスラエルの名がもはや覚えられないようにしよう。』 83:5 彼らは心を一つにして悪だくみをし、あなたに逆らって、契約を結んでいます。83:6 それは、エドムの天幕の者たちとイシュマエル人、モアブとハガル人、83:7 ゲバルとアモン、それにアマレク、ツロの住民といっしょにペリシテもです。83:8 アッシリヤもまた、彼らにくみし、彼らはロトの子らの腕となりました・・」。

 先祖イシュマエルの影響により、アラブ民族が抱いたイスラエル撲滅を願う「反ユダヤ主義」は、現代のアラブの人やはイスラム教徒(ムスリム)に広がっています。しかし、1517年から1917年の400年間にわたって、トルコのイスラム教の指導者スルスタン達は、ユダヤ人がパレスチナにユダヤ人社会を築くことを好意的に見ており、一時的にイスラムの間に「反ユダヤ主義」が影をひそめる期間があったのです。その事を、ユダヤ人のラビであるアブラハム・J・ヘシェルが著書「イスラエル永遠のこだま」の中で詳細に論じています。また、アラブ民族の偉大指導者エミル・ファイサルが1919年3月3日に、ユダヤ人の約束の地への帰還を進める「シオニスト運動」を支持する声明を出したことをも教えています「我々アラブは、シオニスト運動を、深い共感をもって見ている。ここパリに集まった我々代表団は、昨日シオニスト組織から平和会議に提出された提案を熟知しており、我々はその提案を穏当なものと考える。我々は、我々が関与できることに関しては、最善を尽くして彼らを援助するつもりである。ユダヤ人が祖国に心から迎えいれられることを願う・・・私とわが民族は、互いに互いに関心を抱き合う二つの国が、世界の文明社会に再登場できるように、我々があなた方を助け、同時にあなた方も我々を助ける、こんな未来が開ける事を期待している」(同P192) 。以上のように、

ムスリムの人たちとアラブの人たちとイスラエルとの間に何百年簡にわたる平和な期間がありました。しかしパレスチナの指導者ハーッジ・ムハンマド・アミーン・アル=フセイニーが登場し反ユダヤ主義が再燃し事態は一変してきたのです。1936年と1937年にフセィニーはパレスチナ人に暴動を指揮し、エルサレム旧市街のユダヤ人を攻撃させています。フセィニーによってアラブの人たちにが反ユダヤ主義再燃したのです。イスラエルが約2000年間失われていた国の再興を1948年5月14日に成し遂げる前、1947年に国連がイスラエル建国を承認した事に対して、反ユダヤ主義を再燃させたアラブの人たちによるイスラエル攻撃が始まり、4回にわたる中東戦争へと発展していったのです。その詳細は「イスラエル永遠のこだま」に書かれています。(P173~212第5章ユダヤ人、キリスト教徒、アラブ人)。

現代の多くのアラブ人やムスリムの人たちが抱いている「反ユダヤ主義」の精神が、悪魔の罠によりキリスト教会に植え込まれてきました。ユダヤ人はキリスト殺しの故に、彼らの神との契約は全て失われ、その祝福の契約は新しいイスラエルである教会に置き換えられたという「置換神学」が初期の多くの教父たちによって生み出され、オリゲネスやアウグスチヌスなどによって拡大し、植え付けられ大きな大木のように成長してきました。その為に、キリスト教初期の頃から、ユダヤ人はキリスト教会から閉め出され、ユダヤ人への差別、抑圧、虐殺がヨーロッパのキリスト教文化圏の中で長年にわたって行われました。それが、旧ソ連のポグロムやナチのホロコーストに繋がって来たのです。その反ユダヤ主義が欧米では今も拡大していると言われます。「欧米諸国での反ユダヤ主義の深刻化は、数字にもはっきり表れています。昨年1年間で、フランスでは反ユダヤ主義的事件が574件発生、イギリスでは1652件、1か月あた130件以上で、これらは氷山の一角にすぎません。‥アメリカでは1879件の事件が報告されました。豪州では反ユダヤ主義の活動が59%増加・・2028年には1年間で100人近く)ユダヤ人が命を落としました」(BFP月刊誌「オリーブ」2019年11月号)。

世界支配、宇宙の支配と言う野望を抱く悪魔は、メシヤであるイエス・キリストを生んだイスラエルが、自分を滅ぼす為やって来るキリスト再臨の鍵を握っている事をもっともよく知っています。それ故に、キリストの再臨を何としても防ぐために、現代においてもイスラエルを撲滅させようと「反ユダヤ主義」を世界に拡大させているのです。「反ユダヤ主義」の背後には悪魔が潜んでいます。何千年にもわたる長い歴史において、ある民族を滅ぼすというような恐ろしい思想が向けられているのは「ユダヤ民族」だけではないでしょうか。

【終わりに】

神は、悪魔の敵である「女の子孫」として誕生する「神であり人であるメシヤ」をアブラハムの子孫からこの世界に遣わされる事を明確にされました。その事を知った、悪魔はイシュマエルを使ってアブラハムの約束の子イサクを滅ぼしにかかりました。しかし、サラの機転でそのチャンスを失った悪魔は、イシュマエルの子孫であるアラブの生んだ「反ユダヤ主義」によって、イスラエル撲滅を企てるようになりました。

今日の中東問題で、しばしばイスラエルの報復攻撃によりパレスチナの人々が苦難を受けたという事で、国連を初め多くのメディヤがイスラルを非難してきました。しかし、たとえイスラエルの報復攻撃に問題があり非難されたとしても、中東問題の根本的原因がアラブの人たちの「反ユダヤ主義に」とそれに同調する国連の人々や多くの人々の抱く「反ユダヤ主義」にある事を私たちは決して忘れてはならないのです。次回は、万物を支配しようとする悪魔の野望を打ち砕く為に神がご計画された「アブラハム契約」を神がどのように発展させて行かれるのか、又、悪魔がそのアブラハム契約をどのように妨害しようとして来たのかをレポートします。