「敵は人間でなく、悪魔とその手下である」
聖書:エペソ6章11節12節
牧師:佐藤勝徳

1、敵は人間ではない

パウロは、私達キリスト者の敵は、血肉つまり人間ではなく、悪魔とその手下である天上にいる悪霊共とその上に立つ隊長である闇の世の支配者であると教えています。

人間が、キリスト者の敵でないという事は、何を意味しているのでしょうか。それは、キリストが敵を愛しなさいと教えられたように、ある人から悪口陰口などによって自尊心を傷つられたり、悪意でけがをさせられたり命を奪われようとしたりした時、そのような人に対して、又、気の合わない人や横柄な人やどんな人も侮辱したり恨んだり憎んだりしてはいけないという事です。罪を憎んでも敵対する人を決して憎んではならないのです。これまでのキリスト教の歴史の中で、キリスト者同士が争ったり、反ユダヤ主義の思想でユダヤ人を敵視し、侮辱したり、迫害したり、虐殺をするという過ちをキリスト教会が犯してきた最大の理由は「私たちの格闘は血肉に対するものではい」というパウロの教えに背いた結果です。もし、現代の私達がその事を忘れたり、背いたりすれば、私達は、家庭や職場などに平和をもたらすキリスト者でなくなり、醜い争いをもたらすキリスト者となってしまいます。それは、大変悲しい、不幸な事ですので、決してそうならないように、目の前のどのような人も全て見方であり、敵は「一人もいない」という真理をしっかりと心に刻みましょう。「私たちの格闘は血肉ではない」、「私たちの格闘は血肉ではない」を10回繰り返して、心に刻みましょう。

2、敵は悪魔とその手下である

次に、私たちのキリスト者の戦いは、悪魔と闇の世の主権者たちと悪霊共との戦いであるという真理を学びたいと思います。悪魔と訳されているギリシャ語は 悪魔とか中傷者を意味する単数形のデイアボロスです。悪魔はヘブル語でサタン(単数形)と呼ばれ、旧約聖書で19回、新約聖書では38回使用されています。サタンの意味は「敵対者」です。サタンと呼ばれている悪魔は一人です。彼は、神さまのように普遍的な存在ではないので、一つの場所におれば、同時に他の場所にはおられない存在です。では、悪魔は何故いつこの宇宙と世界に存在するようになったのでしょうか。それを詳しく教えているのが、イザヤ書14章と28章です。イザヤ書14章12節では、彼の元々の抽象的な名称が「暁の子」であったと教えています。ヘブル語でヘイレルです。それがラテン語訳では「ルシファー」と訳されていると言われています。英語のキングジェイムス訳では「Lucifer」(ルシファー)と訳されています。その「暁の子」と呼ばれる希望の存在が、傲慢になって神のように万物の支配者になろうとしたのです。その傲慢な思いを持った「暁の子」を、エゼキエル28章では更に詳細に教えています。 エゼキエル28章12~19では悪魔はツロの王としてツロの君主を支配していた事が教えられ、悪魔に堕落する前の天使ケリブの事が詳しく教えられています。①全きの者の典型 、知恵に満ち、美の極みであった ②彼は、赤めのう、トパーズ、ダイヤモンド、緑柱石、しまめのう、碧玉、サファイヤ、トルコ玉、エメラルドなどのあらゆるる宝石に覆われたエデンの園と呼ばれた地球に住んでいた。③彼は素晴らしい音色の金の笛とタンバリンで美しい賛美を神さまに捧げていた。④彼は、神の御使いである「ケルブ」として創造されていた。⑦神さまが彼に傲慢という不正を見出すまでは完全な存在であった。⑦彼は、無数の天使の内3分の1を堕落させた(参照:黙示録12:4)。悪魔によって堕落した3分の1の堕天使が悪霊となって人間に様々な災いをもたらしています。イエス様が、悪霊に取りつかれて苦しんでいる人々から、悪霊を追い出された事が福音書に多く啓示されています。その悪霊どもが堕天使なのです。聖書は亡くなった人間の霊や、動物の霊が悪霊になっているとは教えてはいないのです。

3、創世記1章2節の意味(トゥフー ワァ ボフゥーの意味)

エゼキエル書28章13節の宝石で覆われているエデンの園が、地球全体を意味しているというのは創世記1章2節で理解が出きます。「創 1:2 地は茫漠として何もなかった。やみが大水の上にあり、神の霊が水の上を動いていた。」とありますが、茫漠として何もなかったというヘブル語「トゥフー ワァ ボフゥー」は、旧約聖書では肯定的な意味で使われている用例は一切なく、全て否定的なた荒れた様を意味して使用されています。創世記1章2節の「トゥフー ワァ ボフゥー」は、堕落して悪魔になった天使ケルブを神さまが裁かれた結果の混沌とした地球を意味しているのです。天使ケルブが堕落して悪魔化する前に与えられていた宝石に輝く地球が神さまの裁きで塩水に変えられ、地球は塩水の塊となり真っ暗闇となっていたのです。創世記1章1節の天地の創造と3節以降の天地創造は異なり、その間に悪魔となってケルブの裁きという出来事があったという事です。その証拠に、アダムとエバの住まいとして与えられていたエデンの園に、既に誘惑者のサタンは存在していました。また、堕落しなかった天使ケルブも存在していました。(参照:創世記3:1、3:24)。

4、サタンは2枚舌の蛇と凶暴な龍、又、凶暴なライオンで象徴されている

蛇に乗り移ってエバを誘惑したサタンは、蛇のように二枚舌で人をだましますので、聖書は蛇をサタンの象徴としています。蛇に乗り移っていたサタンに対して神さまは、将来女の子孫であるメシヤ(救い主)によって滅ぼされる事を預言されました。(参照:創世記3:14~15,ルカ10:19,Ⅱコリント11:3,黙示録12:3、9、14,15)。以上のように、サタンは凶暴性、残虐性をも備えていますので、聖書は龍をサタンの象徴として教えています。(参照:黙示録12:3,4,7,9)。サタンの偽り性と残虐性を意味してイエス様は、悪魔の事を「人殺しであり、偽り者、偽りの父」だと教えられました。(ヨハネ8:44)

5、天使はいつ創造されたのか

天使の中で一番位が高いのが「ケリビム」です、その次は「セラフィム」です。セラフィムはイザヤ書6章に啓示されています。(イザヤ6:1~2)。その他に天使長として「ガブリエル」(ルカ1:26)と「ミカエル」(黙示録12:7)が創造されていました。その天使長に仕える無数の天使も創造されました。無数の天使の数を黙示録では「万の数万倍、千の数千倍」とだと教えています(黙 5:11 )。これらの天使は創世記1章1節の天地が造られる前に創造されていました。ヨブ記がその事を教えています。ヨブ記で「天使」を象徴的に「星」で表し、また「神の子とも」と呼んでいます。(ヨブ38:4~7)。このヨブ記の地の創造は、創世記1章の1節の創造を意味しています。それは、罪に堕落していなかった全ての天使たちが、神が地を創造された事を喜び賛美した事でそのように理解が出来ます

6、悪魔の軍隊組織と悪魔の策略

私たちの住んでいる世界と宇宙には、目に見えない霊的存在であるケリビム、セラフィム、ミカエル、ガブリエル、無数の善天使が神に仕えています。その事をまねて、悪魔は、自分が神となって天地万物を支配しようとする野望の達成の為に、多くの堕天使である悪霊共を従えています。その悪霊どもの親分が複数存在しています。一つは「ゼルベルブ」と呼ばれています(ルカ 11:15)。ダニエル書では「ペルシャの君」、「ギリシャの君」と呼ばれています。彼らはペルシャとギリシャの闇の支配者となっていた事を教えています(ダニ10:20。悪魔は、悪霊どもと悪霊の親分たちである「主権、力、この暗やみの世界の支配者たち」とを軍隊の組織のようにして、神に敵対しています。悪魔は神さまが自分の野望を打ち砕く為に、イスラエルと結ばれたアブラハム契約など4つの無条件契約を成就し、、罪に堕落した世界を再臨のキリストが王となってイスラエルを中心とした愛と平和によって統治される「メシヤ的王国」の実現しようとされている事を知っています。彼は、その神さまのご計画を妨げようとして、様々な策略をめぐらし、悪霊共とその隊長を世界の各地に遣わしてそのご計画を阻止し、自分の野望を実現しようとしているのです。その為に、彼はいつもイスラエル民族をこの地上から撲滅させようとしてきたのです。それは、キリストが地上に再臨する最大の鍵を握っているのがイスラエル民族であるからです。イスラエル民族が心を一つにして、昔先祖が十字架にかけたキリストこそが、旧約聖書が預言しているメシヤだっと悟り、キリストを十字架にかけた罪を心を一つにして悔い改め、復活のキリストに向かって「主の名によって来られる方に祝福あれ」と叫ぶと、キリストはその信仰の叫びに応じて再臨される事が聖書に預言されています。(参照:マタイ23:39、ゼカリア12:10)

7、教会の使命

以上のような信仰をイスラエルの人たちが持つ事が出来るように祈り支えるのが、異邦人キリスト者とユダヤ人キリスト者で構成されているキリストの御体なる教会、新しいひとりの人呼ばれる教会、キリストの花嫁と呼ばれる教会です。異邦人キリスト者の使命は、第1に、まだキリストを信じてないユダヤ人に優先してキリストの福音を伝える事と、その伝えた福音をユダヤ人が信じる事が出来るように、ユダヤ人が妬みを覚えるほどにキリスト者一人ひとりが、愛と正義に満ちた素晴らしい人になる事です。それが、異邦人キリスト者、異邦人教会がユダヤ人を救いに導く為の原則となっているのです。使徒行伝を読むと、パウロはどの町で伝道する時も、その町にユダヤ人がいれば、先ずユダヤ人に伝道をしています。(参照:使徒13:5、14:1 ローマ1:16他)。教会の使命は、ユダヤ人への優先的伝道だけでなく、ユダヤ人を経済的に物質的に援助する事が義務だとパウロはローマ書で教えています。「15:27 彼らは確かに喜んでそれをしたのですが、同時にまた、その人々に対してはその義務があるのです。異邦人は霊的なことでは、その人々からもらいものをしたのですから、物質的な物をもって彼らに奉仕すべきです。」

私達異邦人はユダヤ人から多くの霊的贈り物をもらってきました。先ず、私たちの救い主であるキリストが、イスラエル民族を通して与えられた事です。次に、聖書66巻がイスラエル民族を通して与えられた事です。また教会が世界を祝福する霊的にアブラハムの子孫となったイスラエル民族を通してです。初代教会は全てユダヤ人から出発したのです。その他、異邦人キリスト者と教会は多くの祝福をユダヤ人を通して与えられてきたのです。それ故にパウロは異邦人キリスト者が、ユダヤ人に物質的援助をする事は絶対の義務だと教えています。

8、置換神学

悪魔は、それを実践をさせまいとして策略を練り、先ずキリストを信じているキリスト者とその集まりである教会を攻撃しています。その最も典型的な策略は反ユダヤ主義による「置換神学」を教会にはびこらせる事でした。ユダヤ人はキリストを殺したために、神の祝福の契約を全て失い、それに代わって、新しいイスラエルである教会に神の祝福の契約が置き換えられたという置換神学が、キリスト教初期の頃から教会の指導者者たちによって生み出され、AD3世紀においてはオリゲネスによって教会に拡大され、その後、アウグスチヌスによって教会に根付き、その影響が今も続き、多くの神学者や牧師方が置換神学の影響を受けた教会観を教え、また、置換神学の影響を受けた聖書解釈を行い続けているのです。

反ユダヤ主義と反ユダヤ主義によって構築された置換神学により、どれだけ多くのユダヤ人がキリスト教徒とキリスト教以外の人たちから迫害され、差別され、虐殺されてきたか計り知れません。一時、ユダヤ人は民族として存続する事が不可能になる程減少したと言われます。ドイツのナチによるユダヤ人600万人の虐殺「ホロコースト」は有名です。

中東問題で、現在のユダヤ人を批判する多くの偏向報道は、世界に増々「反ユダヤ主義」を広げていると言われています。私たちは、日本の多くの教会が「置換神学」から解放され、ユダヤ人を祝福する祈りを捧げ、ユダヤ人への福音宣教を優先させ、また、ユダヤ人が異邦人キリスト者に妬みを覚えるほど「召しにふさわしく御霊の一致」を熱心に保つ教会になるように祈りましょう。その上で、ユダヤ人への経済的物資的援助が神さからの絶対義務として与えられている事を教会が覚え、忠実に実行できるように祈りましょう。それが、ユダヤ人を撲滅させて、自分が世界の王になろうとする悪魔の野望と策略に対抗する神の祈りの武具なのです。

悪魔はキリストの十字架の死と復活により、創世記3章15節の預言通りに彼の頭が砕かれ、ノックダウン寸前状態です。彼は、復活のキリストに打ち勝つ事が出来ないので、自分が世界の王になるという野望の達成のために、自分より弱い「ユダヤ人を撲滅」させ、キリストの再臨を妨げようとしているのです。その為に、「主権、力、この暗やみの世界の支配者たち」、又、「天にいるもろもろの悪霊共」を使って、この世界の多くの人々とキリスト者に偽りの教え吹き込み、また創造主を信じないように、キリストを信じないように、更に罪を犯すように誘惑しようと様々な策略を練っているのです

そうした、悪魔の策略に堅く立って抵抗する道は、神がご準備下さった全ての神の武具で身を固める事です。具体的な神の武具については、今後少しづつ学んでいきたいと思います。

あなたも、あなたの罪を背負って十字架で身代わりの刑罰をお受け下さったキリストを、自分の救い主として信じて、悪魔の闇の支配から愛と正義と平和の神さまの光の支配へと救われますようにお祈りしています。