「パウロのイスラエルへの愛⑤」
聖書:ロ-マ9章1節~5節
牧師:佐藤勝徳
【はじめに】
パウロが、イスラエルを愛して断腸の思いでイスラエルの救いを祈る第5番目の理由は「モーセ契約」がイスラエルに与えられていた事にありました。「契約は彼らのものである」の契約の中にモーセ契約が入っています。イスラエルが約400年間苦しめられたエジプトから神さまの無条件の愛によってモーセによって解放れされたましたが、それは「アブラハム契約」に基づいての解放でした。解放されるまでに、神さまがご自身の事を「アブラハム契約の神」だと2回啓示されています。①「出エジプト記2:23イスラエル人は労役にうめき、わめいた。彼らの労役の叫びは神に届いた。2:24 神は彼らの嘆きを聞かれ、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。2:25 神はイスラエル人をご覧になった。神はみこころを留められた。」②「出エジプト記3:6 また仰せられた。『わたしは、あなたの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』モーセは神を仰ぎ見ることを恐れて、顔を隠した」。
1、モーセ契約/シナイ契約(ホレブ契約)
モーセ契約はシナイ山(ホレブとも呼ばれた)で結ばれたので「シナイ契約」とか「ホレブ契約」とも呼ばれています。モーセ契約は、イスラエルがエジプトから解放された後、モーセを通して神さまがイスラエルと結ばれた契約です。1956年の米国映画「十戒」で有名になりました。その戒めの数はユダヤの伝統では613あると言われています。その613の中の、10の戒めが神によって石の板に刻印されました。「出 24:12 【主】はモーセに言われた。 「山のわたしのところに上り、そこにとどまれ。わたしはあなたに石の板を授ける。 それは、彼らを教えるために、 わたしが書き記したおしえと命令である。」 2、十戒の教えと精神
①神さまとの正しい関係を教える4つの戒め
十戒が授けられた時、先ず、イスラエル民族と神さまとの正しいい関係を教える道徳的戒めが4つ啓示されました。1.エジプトから救った主なる神以外のものを神としてはならない。2.偶像を造って神としてははならない。3.神の名をみだりに唱えて神の聖なる名を汚してはならない。4.神が天地万物を6日間で創造し、7日目を祝福の日として安息された事を記念として7日目(土曜日)を覚えてこれを聖なる日として安息せよ、の4つです(出エジプト記20:1~11)。以上の様に、十戒の中で、先ずイスラエル民族が天地万物を創造された唯一の神さまとの正しい関係が4つの戒めで啓示されました。
②隣人との正しい関係を教える6つの戒め
次に、イスラエル民族が世界を祝福する民となる為には、人として隣人との正しい関係を守る必要がありましたので、その道徳的戒めが6つ啓示されました。①あなたの父と母を敬え。②殺してはならない。③姦淫してはならない。④盗んではならない。⑤隣人に対して偽証をしてはならない。⑥あなたは隣人のものを欲しがってはならない。 3、十戒の精神を反映した613のモーセ律法 モーセ律法613には祭儀律法、道徳的律法、服飾律法、飲食律法、建築律法、50年毎の解放の年(ヨベル)の律法、春の「過越し祭」、「除酵祭」、「初穂の祭り」、「五旬節」、秋の「ラッパの祭り」、「贖罪日」、「仮庵祭」の例祭などがありますが、それらは神さまの愛と正義と謙遜と聖さに基づいて定められた十戒の道徳的律法を反映させたものです。申命記の「6:4 聞きなさい。イスラエル。【主】は私たちの神。【主】はただひとりである。 6:5 心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、【主】を愛しなさい。」という、神への愛の戒めと、レビ記の「19:18 あなたは復讐してはならない。あなたの民の人々に恨みを抱いてはならない。あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい。わたしは【主】である。」の隣人愛の戒めの二つに、モーセ律法613は要約できるとキリストは教えられました。「マタイ22:37エスは彼に言われた。「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』 22:38 これがたいせつな第一の戒めです。 22:39 『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』という第二の戒めも、それと同じようにたいせつです。 22:40 律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです。」 4、モーセ律法は愛の律法である
以上の様に、モーセ律法は神を愛する事と、隣人を愛する事を教えた「愛の律法」です。モーセ律法が与えられた目的は、アブラハム契約によって「世界を祝福する」という愛の基づく尊い使命をイスラエルが果たしていく為には、愛と正義と聖さと謙遜に満ちいつも最善のみをなされている神との関係、又、人との関係が正しくある必要がありました。出エジプトの出来事は全て「アブラハム契約」に基づいていました。その証拠に、出エジプト記には8回も「アブラハム契約」が言及されています。①神が、エジプトの苦役に呻きわめくイスラエルをエジプトから解放する決断をされた時(2:24)。②燃える柴の中より、モーセをイスラエルをエジプトから解放する指導者に召された時(3:6)。③モーセに神がご自身の名を「わたしある」と教えられた時。(3:14~16)。キリストはその「わたしはある」という神がご自分だと教えられました。(ヨハ8:58他)。④神がモーセの杖によって奇跡をなす全能の神だと示す時に、モーセは神が遣わした指導者だとイスラエルが信じる事を教えられた時(4:1~5)。⑤「主」という神の名(神聖四文字)が示された時/6:2~8)等々。
5、イスラエルが貪欲を捨て愛の民族となる道 神がアブラハム契約で約束されたイスラエルが「世界を祝福する愛の民族」となる為に、イスラエルが神の御心に叶った生き方を身に着けることが絶対に必要でしたので、神は愛のモーセ律法を授けられました。モーセ律法では、50年毎の「ヨベルの年」には全ての借金をゼロにし、全ての奴隷を家に帰さなければなりません(レビ25:10)。その戒めは「貪欲」を捨てる愛がなければ従う事が出来ない戒めです。ですから、イスラエルのこれまでの歴史で「ヨベルの年」の律法を実行した事は無いと言われています。従えば祝福、背けば呪いという「モーセ契約」に教えられている愛のモーセ律法は「貪欲」を捨てる事を教えますが、それを実行させる力がないのです。モーセ律法を愛したパウロは、貪欲を捨てようと必死に努力をした苦闘の末、「貪欲」を捨てさせ、貪欲から解放し、愛に満ちて世界を祝福する者とする力はモーセ律法にない事を知りました。同時にそれを可能にして下さるの十字架にかかり三日目にご復活をされたキリストだと知ったのです。(ローマ7:24、25)。パウロは愛のモーセ律法は「愛のキリストに導く養育係だ」と聖霊によって諭されたのです(ガラテヤ3:24)。パウロは同胞のイスラエルが「アブラハム契約」に基づいて世界を祝福する愛の民族となる為に、モーセ契約の愛のモーセ律法を通して、自分と同じようにキリストに導かれる事を切に願いました。イスラエル民族が従えば祝福という、愛のモーセ律法を実行する民族となる為には、自分たちが十字架にかけて殺したイエス・キリストを救い主として信じる信仰が不可欠なのです。それ故に、パウロは同胞イスラエルがキリストを信じて救われるように、断腸の思いでとりなしを捧げました。
6、異邦人キリスト者は霊的にアブラハムの子孫
キリストを信じている異邦人キリスト者の私達はパウロと同様に、キリストにあって世界を祝福する聖徒として、神の永遠の命と神の聖なる性質が魂に与えられています。異邦人キリスト者の私達は「アブラハム契約」の世界祝福する愛の民となるという約束にあずかり、霊的に「アブラハムの子孫」とされています。私達もイスラエルを祝福するアブラハムの子孫として、パウロの祈りに心を合わせて、切にイスラエルの救いの為に祈りましょう。あなたも、キリストを信じて、世界を祝福する愛の人として救われますようにお祈りしています。